＜５月１０（月）＞interop＋networld
　とにかく会場が広い。どこで受付をしているのかもよくわからない。
ぐるぐる回ってやっと受付らしきところに来た。泊まっているホテル
や滞在期間などを書かされる。観光協会とグルになっているのだろう。
　会場は日本の幕張の何倍もの規模だ。出展各社が各々趣向を凝らし
たブースを出している。私は今回のinterop＋networldに以下の課題
を持って望んだ
・音声統合技術（特にVoIP）
・セキュリティ（VPNなど）
・CT(ComputerTelephony)
会場が広いことは予想できていたので、全てのブースを回りきれない
からである。結論から言うと、ほとんどが音声統合とVPNに関するもの
だったと言っても過言ではないだろう。音声統合についても、VoATMな
どはどこにも無く、VoIP一色という感じだった。私が昨年来、TOTO社
内で展開してきたことが間違いでは無かったことがここで証明された
ようなものである。VPNも、VoIPと関係が有り、例えばインタネットな
どを利用して企業の支店間または企業間でのセキュアな情報交換（特
にVoIPによる音声統合）を進めることがトレンドとなるであろう。
　実はこのことは、アトランタに行って行おうとしているテストその
ものである。日本ではVoIPの様な未成熟（と大手ベンダーが呼ぶ）な
技術を展開することはギャンブルだと評されてきたが、それは大手ベ
ンダー（もしくはメーカー）の論理であり、彼らの販売戦略から導き
出される結論でしかない。メーカーは高い機器を売りたいし、NTTに代
表されるキャリアは太い専用線を売りたいに過ぎない。その戦略に、
未だに日本の各社ユーザは騙されている。そのような図式が完全に目の
前で明らかになっていくのがよくわかった。
　但し、VoIPも私の予想よりは先に進もうとしている。EtherPhoneの
出展が数多くあり、PBXまでNTマシンで動作しているものもあった。こ
れは音声統合の流れが、PBXのリプレースまで巻き込んでいることを意
味している。長らく続いてきたデジタルPBXとオフィス電話（デジタル
Phone）による企業電話網は、EtherPhoneの出現で終焉を迎えることに
なるであろう。詳しくはこのレポートでは書かないが、少なくともこの
先２年間の業界の動向を把握することができた。

　interop＋networldの詳細な報告は別に書くことにしよう。われわれ
は会場を後にして、ちょっと街に出ることにした。ラスベガスのメイン
ストリートは「ストリップ」と呼ばれる。ストリップに沿ってホテルが
立ち並んでいる。各ホテルとも趣向を凝らしたつくりをしており、自由
の女神がドーンと立っているものもある。どのホテルにも共通して言え
ることは、ホテルの中心にカジノが位置していることだ。ニューヨーク・
ニューヨークというホテルでは、フロントの３ｍ前までカジノが迫って
いる。
　ストリップ周辺は治安が大変良い。何しろ観光収入で生きている街な
ので治安の悪化は死活問題なのだろう。何の不安もなく街を歩くことが
できる。
　夜はフリーモントストリートに行った。電飾の屋根で有名なところだ。
たった５分間のショーであるが、派手好きのアメリカ人のやることは規
模がデカイ。圧巻だった。
　最悪だったのはその後で入ったレストランだ。調子に乗ってステーキ
などを注文したが、量が多くてマズイ。肉に全然味が無い。ステーキソ
ースが出てきたので、それをかけてみると、またこれがマズイ。こんな
安っぽいソースは日本でもそうやたらにあるもんじゃない。こりゃ、食
えないぞ、と思っていたところ、醤油をかけると少しは味がましになる
ことが判明した。が、時すでに遅し。三浦君は
「食えません」
とほとんどを残してしまっていた。最低であった。
　帰りのタクシーを捜そうとしたが、ホテルが無い。一般的にアメリカ
では流しのタクシーに乗ってはいけない。危険である。そこでホテルの
タクシー乗り場から乗ることになる。ちょっと先にホテルが見えたので
そちらに向かっているとタクシーが停車していたので
「これに乗ろうか」
とちょっと思ってしまったが、近寄ると何だか危ない雰囲気だ。慌てて
逃げた。やはりホテルから乗るべきである。安心だ。

　なお、今回のinteropと音声統合テストには、クボタシステム開発の
今岡さんも一緒に来ている。彼は関空からで飛行機は別だが、基本的に
私たちと行動を共にすることになっている。彼がいれば音声統合テスト
もスムーズにいくだろう。

＜５月１１日（火）＞
　第二日目のinterop。前日に回りきれなかったブースを積極的に
回る。英語は不得意だがそんなことを言っていられない。とにかく
話し掛けるしかない。パネルなどで説明してもらいながら話すとな
んとか通じる。お互いエンジニア同士なので使う用語などは共通し
ている。とにかく２日間ずっと歩きっぱなしだった。途中、Ｔシャ
ツ欲しさにフリークライミングにも挑戦し、
「太ってはいるが運動神経には自信がある」
という気力だけで登りきった。
　また、バリバリのベンチャーだろうと思われるインド系の兄ちゃ
んが
「Do you use cisco router?」
と話し掛けてきたので、
「Yes」
と答えると、物凄い勢いで説明し始めた。何やらCiscoWorks（シス
コのManagementSoft）のアドオンソフトをJavaで書いており、コン
フィグの履歴管理などできるらしい。彼にとってはinteropに出展す
ることは金銭的にも賭けだったかもしれない。しかしここで当たれ
ば正にアメリカンドリームだ。この会場にはそんな空気が充満して
いる。
　もっと何日でもここにいたい気分だが、PM6:00の閉演ギリギリま
で粘ってから帰途についた。足が棒のようになってしまい、もう、
今日は出歩く気力もない。明日はアトランタへの移動日だ。
　今日でアメリカ滞在３日目だが、食事などでは特に不都合も感じ
なくなった。レストランなどでは使われる単語はどこでもほとんど
同じだ。ただ、現金で払うのかカードなのかでちょっとだけ勝手が
違うだけである。私はもういっぱしのアメリカンになった気分であ
る。

＜５月１２（水）＞
　今日は移動日。朝５時半に起床して６時にBreakfast。三浦君は起
きているのか寝ているのかわからない感じだ。時差ぼけだろうか。こ
のMGMホテルはあまりにも巨大なのでチェックアウトに手間取っては
まずいと思い、早めに動くことにしていた。ホテルからメール用に
電話をかけているのでその精算がある。ベリースムーズに事が運ん
で一件落着。この電話代は会社の経費で落ちるのだろうか。心配だ。
　なお、今回は仕事での出張なのでお土産も買わないし、ギャンブル
もやらない、と決めていたのだが、おつりにコインを出すような余裕
のない私は２５セントがたまってしまったのでスロットを回すことに
した。２５セントを２枚入れて回すとあっけなく５倍になってしまっ
た。私は自分で自分の性格を知り尽くしている。このまま熱くなれば
全財産を失うどころかカジノを取り仕切っているマフィアに目をつけ
られるようなことまでやってしまうだろう。勝ったところであっさり
と引くことにした。皆さんはカジノでの奮戦記を期待しただろうが、
とんでもない。お仕事の出張なのである。

　無事にアトランタ到着。ホテルはダウンタウンにある。古海さんか
らダウンタウンの治安の悪さについて聞かされていたので多少びびっ
ている。が、明るい内はいいだろうと三浦君と街をぶらぶらすること
にした。が、明らかにラスベガスと雰囲気が違う。三浦君は黒人の浮
浪者に金の龍の置物を売りつけられそうになっている。なんだこの街
は？
　５分ほど歩いて、もうやばいのでホテルに帰ろうとメインストリー
トから外れた方向に歩こうとすると、黒人がたむろしている。あもわ
ず反対方向に逃げた。
　なんとかホテルに逃げ帰ってしばらくすると今岡さんがホテルに到
着した。今日からは同じホテルだ。軽く食事を取ろうということにな
り、ホテルだとなかなか軽く食べるようなものがないので
「マックに行こう」
と決まった。マックまでは１００ｍくらいなので大丈夫だろう。
　ところが、その１００ｍが危ない。浮浪者みたいなやつらとばかり
すれ違う。なんとかマックについてホッとしていたら、そのマックが
危なかった。店員の黒人少年３人が客席周辺で大騒ぎしているし、目
つきのおかしなやつがこっちをじっと見ている。とてもこの店で食べ
れる雰囲気ではない、と判断した私たちはTakeOutして逃げることに
した。逃げるようにしてホテルに向かうが、帰る途中で物乞いに会う。
ビルの影に危なそうなヤツも隠れているぞ。ホテルに帰りついて
「もう二度とこの街を出歩かない」
と決めた。

　もう寝ようとシャワーを浴びようとしたが、なんとお湯が出ない。
こんな高級ホテルで何たることか。三浦君が英語でフロントに電話し
OKと言われたらしいが、何がOKなのか一向にお湯が出ない。待ちきれ
なくて寝てしまった。
　ところが朝起きるとお湯が出る。文句を言うこともできず、急いで
シャワーを浴びた私であった。

＜５月１３日（木）＞
　今日はTOTO KIKI USAだ。大津賀さんがホテルまで迎えに来てくれた。
ハイウェーを１３０キロくらいで飛ばしている。７車線くらいあるので
スピード感は感じない。２０分ほどで会社に到着する。
　まずは荷物の確認だ。あったあった、ルータが届いている。よしよし。
北野社長やシステム担当のJEFFと挨拶をする。JEFFからはネットワーク
機器関連について説明を受ける。ふむふむ。
　早速作業に取り掛かる。まずはルータを外部セグメントに接続しなけ
ればならない。ところが外部セグメントはバリバリのセキュリティが掛
けられてして、インタネットとの接続に使用しているルータのアクセス
リストを変更しなければ接続不可能だ。ところだ、そのルータのパスワ
ードをJEFFが把握していなかった。JEFF曰く
「２年前にプロバイダがセットアップして、その時に記録されているパ
　スワードは既に変更されていてわからない。」
ということでお手上げだ。
　そこで、内部セグメントに設置し、ファイヤウォールでNATを掛ける
ことにした。スタティックルートの設定など高度な知識を必要とする
作業であるが、JEFFと話し合いながら作業を進めて、なんとか夕方まで
に小倉に設置したルータとIPレベルで通信可能状態になった。本当はさ
らに困難な状況が待ちうけていたのであるが、このレポートでは割愛し
よう。あとは現地時間の夕方５時、日本時間の朝６時に宮原さんが出社
してくるのを待つだけだ。

　なお、ランチはJEFFたちと外に出た。軽く食べるのなら、ということ
でメニューを選んでいるのであるがとにかく量が多い。今岡さんなどは
サラダだけで皿いっぱいに出てきていた。アメリカ人は太っている人が
多いが、こんなに食べているのであれば当たり前だ。

　夕方の５時。さぁ、テスト開始だ。ところが、また通信上の問題点が
出て困ったことになった。JEFFに話をつけようとすると、もう帰ったと
のこと。とほほ・・・
夕方以降のテストに協力するとメールでは言っていたのに。
　仕方なく、マシンルームの鍵を開けてもらって設定変更などを自分た
ちで行った。７時くらいにはなんとか内線電話が通じる状態になった。
ところが声が途切れてしまう。詳しくは書かないが、TOTO内からのイン
タネットアクセスが問題のようだ。今日はもう夜も遅くなったので引き
上げることにした。明日は日本では土曜日なのでインタネットアクセス
はほとんどないだろう。今日との比較としては十分な条件である。

　今日の夕食は、もう外出は嫌なのでホテルで食べることにした。大体
日本円で４０００円くらいだろうか。日当ではとても払いきれないが、
安全を金で買うという考え方からしかた無い選択だ。まずウェイターさ
んがしきりにワインを薦めに来る。「要らん」と言うと
「Oh,no wine」
などと大げさに言う。俺らは夕食にワインを飲むような習慣はないぞ。
ビールで十分だ。ビールを出せ。

＜５月１４日（金）＞
　朝から三浦君がやらかしてしまった。ビュッフェ形式で朝食を取った
のだが、三浦君がTCで払うことになった。問題はチップである。実は
きのうの朝も同様に食事を取ったのだが、レシートにチップを書き加え
て払おうとしたのであるが、チップを取らなかったのである。そこで
「ははぁ、このようなところではチップを払わなくていいんだ」
と勝手に解釈した私たちはチップを払う気が無かったのである。ところ
が、TCで支払いを終えた三浦君にウェイターが何か突っ込みを入れて
いる。遠くから見ていたのであるが、どうも険悪な雰囲気になってき
たのでこりゃマズイと助けに向かうと、ウェイターが
「You do not understand, Sayonara!」
と言い放った。三浦君曰く
「何だかテーブルチップが何とかとか、１ドルがどうしたとか言って
　いたんですが・・・」
ということである。要するにひとり１ドルのチップを出せという要求
だったのだ。そりゃ、そんなこと言われたら払うしかないだろ、と思
っても後の祭りだ。
「もう二度とこのレストランに来ません」
と三浦君は言っていた。

　今日は、まずJEFFが忘れているルータのパスワードのハッキングだ。
問題はその時にルータが１０分など止まってしまうことであるが、JEFF
に話をすると、JEFFも困っている状況なので、就業中にも関わらず
「OK, no problem」
と快諾してくれた。よしよし、ハッキング成功。準備は完璧だ。後は
また日本側が朝になって出社してくるのを待つだけだ。
　ところが試しに掛けたVoIP内線電話に
「はい、本城です」
と本城君が出た。おまえ、日本は夜中の２時だろ。何やってんだ。
　しかしチャンスだ。接続変更やら何やら頼みまくってしまった。
音質も良好だ。しかし、きのうと同じ人間が会話しないと音質の比較
にはならない。朝の３時過ぎまで本城君を引っ張って
「用が無いんだったら帰っていいよ」
と冷たく突き放した。まったく、我ながら人使いが荒いと思う。

　後は宮原さんが出社してくるのを待った。いろいろ試しに電話して
いると
「はい、宮原です」
と電話に出た。極めて明瞭な音質だ。やった。実用レベルだろう。
細かい報告はこの中ではしないことにする。可能不可能ということ
だけではなく、このようにインタネット上でQoSが必要なリアルタイム
通信を行う場合の問題点も見えてきた。いい仕事ができたと思う。

＜５月１５日（土）＞
　今日はテストの予備日である。テストは終了したのでオフ日となった。
名誉のために言っておくが、一泊削って帰ろうとはしたのだが、航空券
が格安チケットなので変更ができなかったのである。一応は航空界社に
問い合わせをしているので誤解無く。
　今日は同じホテルが取れなかったのでオムニホテルに移動する。とこ
ろがいきなりトラブル発生。フロントで確認すると
「予約は５泊は入っている。一泊３００ドル払え」
と言う。私はＪＴＢにお金を払っているので、当然ホテルには払う必要
がない。呆然としてしまって言葉も出ない。何とか
「「I already pay money to travel company .」
と言ったところでフロントも事情がわかったみたいで
「You speak english good!」
などと調子のいいことを言っている。とにかく部屋に入れ、後で話し合
おうとのことである。部屋からＪＴＢのトラベルデスク（ロス）に電話
して事情を伝え、フロントに電話してもらった。一時間後くらいにやっ
とクリアになり一安心。

　安心して腹が減ったのでランチに出かけた。支払いを三浦君がTCで行
うことにして、その旨をウェイトレスに伝えるとサインもしていないTC
をいきなり持っていき、おつりを持ってきてしまった。いいのかなぁと
いいながら退散したが、あのTCは現金化できるのだろうか。ウェイトレ
スさんに何らかのペナルティがないのか心配である。

　アトランタは観光地ではないので特にこれといって行きたいところは
ないが、いろんな人に聞いて
・CNN
・コカコーラ博物館
・アンダーグラウンド（地下ショッピングセンタ）
の３箇所だけ回ることにした。
　CNNは大したことなかった。ちなみに入場料は７ドルである。コカコー
ラ博物館も大したことなかったが、世界各国のコカコーラ製品を自由に
飲むことができる。入場料は６ドルだ。
　しかし、すべて徒歩で回ったのだが、黒人の路上パフォーマンスなど
やっていて、あぁ、アメリカに来たんだなぁと感じさせる。ヘッドホン
をつけて大声で歌いながら歩いてくる人など、実に多彩な人たちだ。行
き交う人々の８割が黒人である。南部のジョージア州ということで当た
り前だろう。マックでの恐ろしい経験以来、多少びびっていた私である
が、何だか街の雰囲気に溶け込むことが多少はできた気がする。アンダ
ーグラウンドも独特の雰囲気に包まれていて面白い。特に買いたいとい
うものはなかったが、お店を回るのも楽しいものだ。
　しかし、どこにも多数の警官がいるのは逆に言うと治安が悪いという
ことなのであろう。とにかく警官が多い街であった。
　なおアトランタには２箇所TOTOの工場があり、私たちが行ったのはモ
ロー工場である。アトランタのスラム街にもうひとつの工場があり、TOTO
の看板に拳銃で撃たれた穴がふたつ空いているらしい。恐ろしいところ
である。

　その後、ホテルに帰ってから音声統合テストの報告書を書き上げた。
３時間くらいだっただろうか。その間三浦君はずっと寝ていた。時差ぼ
けが取れないようだ。明日はついに帰国だ。

＜５月１６，１７日（日・月）＞
　朝早くから空港に移動する。チェックインも滞りなく済ませる。運良
く現地赴任中の蔵元さんが、私たちと同じ便で出張で福岡に行くことに
なっている。蔵元さんについて行けば安心だ。
　途中、ポートランドを経由して福岡へは順調に着いた。合計で１５時
間くらい飛行機に乗っただろうか。何度機内食を食べたのかわからない
くらい食べた。ブロイラー状態だ。ただでさえ太目の体が、なおさら重
くなってしまう。途中のポートランドでは免税店で買い物をしている人
間の９９％が日本人だった。私は家族を含めて一切お土産を買わないと
決めているので何も買わなかったが、三浦君はいろいろなしがらみがあ
るようで色々と物色していた。
　福岡に着き、入国審査も当たり前のように通過。さぁ、早速会社に帰
って仕事だ、と気合を入れてバゲージクレームで荷物を待っていたとこ
ろ、何と、荷物はアトランタにあるらしい。蔵元さんも同様だ。蔵元さ
んなどは出張なので明日からのスーツがなく、仕事の資料もない状態だ。
これだからアメリカ人はいい加減なんだよなぁ。このレポートを書いて
いる現在、まだ荷物は届いていない。最後になってとんだオチがあった
ものである。まぁ行きじゃなくてよかった。行きだったらテストのスケ
ジュールに深刻な影響を与えたことだろう。運が良かったと思うことに
している今日このごろである。

以上です。最後までありがとうございます。