実は目標を変更した。約一年前の出張日記でCCIE Voiceへの挑戦
を宣言した私であるが、事情によりCCIE Service Provider へと、
追い求める対象を変更したのである。大した事情ではないが、機材
の関係ということにしておこう。それに、自分としてはMPLSコア
ネットワーク技術で人に劣っていると感じる部分があり、これを
補強するために挑戦を思い立ったのである。
簡単にいうと、ISPやキャリアなどがお客様ネットワークをMPLS
技術等を用いてVPNにて接続するのであるが、そのコアネットワーク
を構築するスキルを問われる資格である。隣の席に座るナカヤマさ
んなどから「VRFがどうのこうの。。」などと言われると
「あ、あー、そうですね」
みたいに、声を震わせながらわかったフリをしなければいけないの
で寂しいのである。この天才をいつか抜いてやる。
この資格は会社が支援してくれないことがあらかじめ決まって
いる。事業部の主力プロダクトと合致しないためである。そう言わ
れるとなおさら
「この野郎〜、勉強する環境ないけどやってやるぞ」
という気合いが入るのである。
６月にラボ受験を設定して、学科を取ることにするが自費なので
"ちょっと痛い。正確な金額を忘れたが、35,000円くらいだろうか。
"
このCCIE Service Providerの学科試験は数種類から選べるように
なっている。私はDSL技術（いわゆるADSLとか、それ関連）で受験
することにした。内容はお話しできないが難しいです。５日間くら
い、ほぼ徹夜状態で勉強して何とか一発合格することができた。
これでラボ受験の資格を得ることができた。睡眠不足でふらふらで
ある。もう、だめぽ。。。
CCIE Service Providerのラボはシドニーとベルギーで受験できる。
私は慣れているシドニーを選択するのは当然である。それに毎年
JALからもらっているホテルクーポンがシドニーのフォーポインツ
シェラトンで使えることが判明し利用すれば安く渡豪できるので
これ幸いである。学科とラボの受験費用だけで２０万円近いので
こういうのは大変助かるのである。航空券もバカにならないし。
シスコのCCIEページに書かれてあることなので特に隠す必要はない
が、出題内容にはMPLS Tag Switching や Traffic Engeering などの
機能が必要であり、私が普段から勉強に使用している2500Routerでは
稼動せずに勉強できない。そこで会社の検証チームに正直に「勉強に
使用する」ことを伝えた上で、勉強に使える機材を借りることができ
たので早速九州の営業所に送り込んだ。
私の机の下はものすごいことになってしまった。自分のRouterも
併せて10台以上もの機材で勉強している。机の下に扇風機を仕込んで
冷やしている実情である。よくわからなかったMPLS技術であるが、
少しずつ理解できるようになった。6/10にラボの予約を入れて、もう
後には引けない状況である。オレは負けない。この勝負、勝ってやる。
＜６月８日（水）＞
出発日。自費なので休暇で行くことになっている。朝から自宅で
勉強し、昼過ぎに福岡空港経由で羽田、さらにリムジンバスで成田に
向かうことにする。やはり福岡から成田出発の便に乗るのは大変で
ある。JALは朝早くにたった一便だけであるが成田直行便がある。昼前
に出発の便を利用するのであれば便利であるが、シドニー便は夜の九時
過ぎの出発である。
延々と移動して成田到着。今回はグローバル会員が利用できるシャ
ワールームで汗を流すことにした。シャワー、と言っても湯船もある
ので大変良い。これが無料なので大変助かる。
チェックインはいつものようにわがままを言いたい放題である。元々
Exitシートを確保していたが、隣が座ったとのこと。こりゃイカン。
すかさず違うシートで３席全てをブロックできるところを確保してもら
った。勉強しながら行くので、隣がいると本当に大変なのでこういう
配慮はとても助かるのである。たまにはやるな、JALも。
出発まではいつものようにラウンジで勉強する。マッサージチェアで
ゆったりとしながらドキュメントに目を通す。
（注：画像は私ではありません）
約二時間ほどラウンジで勉強する。スポーツ新聞を読んでいると
「オレンジレンジのドラマーが腱鞘炎で離脱。メンバーを公募。」
みたいなことが書かれていた。当然、ここは例の「引越しオバサン」の
出番だろう。彼女の「ひっこーし、ひっこーし」というリズムの良さ
には定評がある、異論もないであろう。
今回は普通にエコノミーである。３席確保できているので楽チンで
ある。と、乗り込んだ瞬間に横になって寝るオヤジを発見。よほど眠い
のだろうか。ひと通り勉強したあとで、睡眠薬を飲んで私も寝ることに
する。（この画像も私ではなく、知らないオヤジです）
ちなみにこのオヤジ、トドのようにずっと寝ていた。そういえば昨年
のサンノゼ出張の際に似たような生物を見かけた記憶がある。あぁ、
そうだ、これこれ。
＜６月９日（木）＞
朝の６時半くらいに起床する。ほぼ定刻通りに到着する。体が異様に
疲労しているのでタクシーでホテルに向かう。自費の時は電車が恒例で
あるが、疲労のための措置だ。
いつもは受験地であるChatswoodに宿泊する私であるが前述通りにクー
ポンの関係で市内のフォーポインツシェラトンに向かう。数年前まで
ホテルニッコーだったところだ。市内のハーバー寄りに立地しており
電車の駅にも近くて便利である。タクシーの運転手さんはいきなり日本
語で話しかけてくる。５年くらい日本で観光の仕事をしていたそうで、
9.11などの影響で仕事が減ってオーストラリアに戻ったとのこと。
日本人は働きすぎる、と当然の感想を述べていた。そうだよ。働くのが
好きなんだよ。仕方ないでしょ。だから産業が発展してるんですよ。
観光ドライバーが土産物屋からコミッションをもらって「お薦めの店」
などというのが自分でも嫌になって、普通のタクシーのドライバーを
やっているとのこと。正直な人間だなぁと思っていたが、どうやら遠回り
をしているみたいだ。私ももう８回目のシドニーである。少しは地理が
わかるのである。トラブルは避けたいので、それとなく地理に詳しい事
を話してやっとホテルに直行を始めた。危ない危ない。
なおシドニーのタクシーのほとんどは防犯カメラを装備している。
５秒に一回ほど録画してトランクにあるディスク（？）に貯め込んでいる
とのこと。タクシーはよく狙われるから、という理由らしい。
フォーポインツに９時過ぎに到着する。チェックインできるかなー、と
心配だったが何とか空いている部屋を探してもらって無事に部屋に入る。
Chatswoodのアパートメントとは違って普通のホテルである。
外も普通の市街地である。
勉強道具を取り出して戦う体制を整える。よし、やるぞ。
おっと、その前に明日になって困らないように駅の場所と切符の買い方
を学習しておこう。フロントで場所を聞いて早速駅に向かう。歩いて５分
くらいで到着。プラットフォームの番号まで調べてようやく安心安心。
戻りがてら、近くのハーバーに向かう。おや、昔ナカヤマさんと受験に
きた際に訪れた水族館があるぞ。修学旅行みたいな団体もいる。なかなか
盛況である。
ハーバーには軍艦やら潜水艦などが停泊している。シドニーは全体的に
のんびりした街でとても過ごしやすい。日本人もとても多く、コンビニ
でも店員の第一声は「いらっしゃいませ」である。典型的な日本人に見え
るのであろう。コンビニのねぇちゃんに
「お仕事で来たんですか？」
と突然話しかけられ、動揺しれ
「あ、そ、そ、そうですね。仕事、というか、え、え、試験を受けに来た
とですけど」
と答えると
「頑張って下さい」
とのこと。コンビニで応援されるとは思いも寄らなかったよ。
普通のホテルなのでさとうのご飯を調理することはできず、今回はコン
ビニで購入したカップめんで過ごすことにする。外食するお金がないので
仕方ない。受験出張なんてこんなもんである。観光気分はゼロである。
一度紹介したことがあるが、今回も私の信じる旅行グッズを持ち込んで
いる。私は枕が気に入らないと寝れないので、受験などの大事な出張の
際には必ず持ち込むことにしている。
今回はカンガルーのキン○マでできたラッキーポーチを持ってきている。
弊社の九州営業所でも人気沸騰のアイテムである。持っていないとバカに
されるレベルとでも言おうか。九州営業所に宅急便を配達にきたフリをし
てハンコを求めて欲しい。全員がラッキーポーチから印鑑を出すはずである。
また絶対に遅刻できないので仕掛ける目覚ましは４つである。プロの
受験家として当然である。遅刻は最悪である。最近、格闘家なる人々が世に
出てきたが、私は自他共に認めるプロの受験家である。そういえば、大相撲の
北尾が引退後にスポーツ冒険家という分野（？）で活躍したが、どういう種別
の分野だろうか。今もって不明である
夜の１１時くらいまで勉強して、翌日が４時起きの予定なのでそろそろ
寝ることにする。おやすみなさい。
＜６月１０日（金）＞
朝の４時に起床して最終チェックをする。６時半にホテルを出て駅に
向かう。chatswoodまで約20分。興奮しているので電車の中ではなかなか
勉強できない。気が高ぶってくる。受験会場であるシスコに到着。時間は
７時過ぎ。８時半の集合なのでカフェでお茶をしながら本当の最終チェッ
クをしていく。ちなみにこのカフェはラボ試験中の昼食を食べる際に
利用される。受験中に撮影するとまずいことになるだろうが、今は通常
の営業時間なので問題ないだろう。
８時過ぎに受付に向かい、ほどなくして例のプロクタが登場。おやっ
という顔をして私を見ている。
「トリプルに挑戦なのか？ タフガイだな。」
と。タフだから、という思いは全然なく人に負けたくないだけである。
受験に関する注意事項が説明され、いよいよ受験開始。いつもの通りに
内容については一切触れることができないのでご容赦頂きたい。とても
難しい。何度も途中で動作がおかしくなるが、今まで勉強してきたこと
を生かして全てを切り抜けていく。
ランチの時間。いつもはプロクタを囲んで食べることになるが、今日は
違うシスコ社員も同席するようである。アジア系で、日本人かと思ったが
違うようだ。とてもフレンドリーなヤツで好感が持てる。一般的にランチ
の時間は、受験者は午後の時間で気が気ではないのでゆっくりと食べてい
る余裕はない。考え事をするので食べないという受験者もいるくらいで
ある。試験時間自体は８時間で変わらないのであるが、少しでも早くラボ
に戻りたくてランチは早く切り上げる傾向にある。
ところがこの同席したヤツがやってくれた。プロクタと仲がいいのか、
ずっと喋っている。受験者は普通は無口なので黙々と食べる上に、食欲
がないので早く食事が終わってしまう。ところがコイツはしゃべりまくる
から一向に食事が進まない。しかも全部食べようとする。私は慣れている
ので比較的冷静にしていたが、他の受験者はだんだんとイライラが募って
きたようだ。殺気がランチの席上に充満している。それでもこいつは
しゃべって一向に食事が終わらない。ものすごい雰囲気のランチであった。
もしかしたら合格できるかもしれない、と少し気が緩んだかもしれない。
残り３時間でネットワーク全体の動作がバラバラになった。どこまで戻せ
ばいいのか判断できない。オールクリアする時間はもちろん無い。焦るが
「オレは負けない」と自分に言い聞かせてトラブルシュートする。やっと
間違い箇所を発見し、全体に疎通確認ができるようになった。VPN間の通
信もばっちりだ。問題で指定されている動作を全てクリアできている。
あとは細かい機能の設定が題意を満たしているかどうかということである。
残り一時間。全体をもう一度最初から見直していくことにする。途中
で間違い箇所を発見。あとで設定した内容が重複されていて、ほんの
細かいところで題意を満たしていないことを発見。こういうときは
会心の一撃とでも言おうか。合格に限りなく近づいたと感じた。
タイムアップ。プロクタといつものように握手して電車でホテルに
戻る。いつ結果が出るだろうか、日本に戻った頃だろうか、などと思い
ながらメールチェックすると、何と合否メールが届いている。一時間も
経過していないが、こういうときもあることは知っている。合格を確信
していた私は軽い気持ちでメールを開いた。トリプルホルダー誕生の瞬
間さ、くらいの軽い気持ちで。
しかし、結果は非情であった。何と不合格。スコアそのものを公開
できないのであるが、本当に一問くらいの失点で不合格になっている。
何だか理解できない状況である。確かに一発合格など望めない難しい
資格であることは誰よりもわかっているつもりである。その厳しさを
知る私がほぼ合格を確信するほどよくできた内容だったと思っている。
だが、結果は間違いなく不合格である。何度見直しても変わらない。
注ぎ込んだ時間をお金を考えると放心状態である。ショックのあま
り次回の受験を考える余裕もないほどである。
が、すぐに次に向けて間違ったと思われる箇所について解析を始める
ことにする。できた、と感触が良かっただけに解析も難しいがやるしか
ないだろう。
夜の２時まで解析を続け、ようやく寝ることにした。明日は空港に
向かうため朝の５時半起床である。
＜６月１１日（土）＞
電車で空港に向かう。Chatswoodまでは3AUDくらいだったが、空港まで
は同じ距離／時間くらいで12AUDくらい。高いなぁ。
エグゼクティブカウンターでチェックインするが満席に近いとのこと。
しかも私の確保してある席は例によってExitシートなので人気が高く、
隣を空けることはできないだろうとのこと。それでも粘り強く交渉を続け
何とか
「できる限りExitの3席全部を確保するようにします。もしダメだった
場合に、他の席で隣が空いている席を見つけたらそちらに移動という
条件でどうですか？」
とのこと。やるじゃないかJAL。見直したぞ。これからもJALに乗り続けて
やろう。
安心してラウンジに向かって解析の続き。特に土産物を買わない私
は解析に没頭していた。機材到着遅れのため少し遅れてフライトである。
実は諸事情があり次回受験できるかどうかわからないのである。受験
できない可能性の方が圧倒的に高く、勉強が無駄になるかもしれない。
しかし、資格挑戦の目的は他人を凌駕する技術力を見につけることなの
で、たとえ資格を取れなくても気にすることはあるまい。合格に向けて
全身全霊で勉強することに意義があるのである。隣の席の天才ナカヤマ
には絶対に負けたくないのである。
何度でも言おう。オレは負けない。
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